
「なぜ偽物はこんなに安いのでしょうか?」
模倣品について語られる際によく挙がる疑問の一つです。多くの人は材料費や人件費の違いを思い浮かべますが、価格差の本質はそこだけではありません。
正規品の価格には、研究開発、品質試験、安全基準への適合、保証、アフターサービス、回収対応まで含まれています。商品を販売した後まで責任を負う仕組みを維持するためのコストです。一方、模倣品はブランドの信用だけを借り、その仕組みの多くを負担していません。見た目が似ていても、品質保証や責任の所在は大きく異なります。
近年は「偽物を安く作れるようになった」のではなく、「見つかりにくく売れるようになった」ことも大きな変化です。日本の税関が2025年に差し止めた知的財産権侵害物品は31,760件で、そのうち郵便物が86.5%を占めました。また、OECDとEUIPOの報告書によると、国際的にも押収貨物の小口化が進み、10点未満の小口貨物は全体の79%を占めています(2020〜2021年、前年期は61%)。ECの普及と小口配送の拡大は、販売や物流のコストだけでなく、摘発リスクの構造そのものを変えています。
もちろん、安い商品がすべて模倣品とは限りません。ジェネリック製品や並行輸入品、正規の低価格ブランドとは区別して考える必要があります。価格の高低だけでは、品質保証や責任の所在は見えてこないからです。
私たちは商品の価格を見ることはできます。
しかし、その価格に含まれていない「責任のコスト」まで見えているでしょうか。
参考情報:
・財務省「令和7年の税関における知的財産侵害物品の差止状況」
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