
特許庁より2026年版の模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告が公表されました。
今回の年次報告で最初に目を引いたのは相談件数の減少です。2025年に寄せられた情報提供・相談は686件。前年の1,007件から約3割減少しています。
この数字だけを見ると、模倣品を取り巻く環境は改善していると受け止める方もいるかと思います。しかし、年次報告を読み進めると、少し違う景色が見えてきます。
相談や情報提供の約8割は、依然としてインターネット取引に関するものです。通販サイトやフリマアプリ、SNSなど、模倣品が流通する主戦場は変わっていません。相談件数は減少しています。しかし市場の構造そのものが大きく変化したとは読み取れませんでした。
ここで一つ考えてみたいことがあります。
686件という数字は、模倣品の発生件数ではありません。「相談窓口へ寄せられた件数」です。
例えば、病院を受診する人が減ったからといって、病気そのものが減ったとは言えません。同様に、相談件数の減少だけで模倣品によるリスクが小さくなったと結論付けることはできません。背景には企業が自社で対応するケースの増加、EC事業者による削除対応の進展、あるいは相談に至る前に解決した事案など、さまざまな要因が考えられます。ただしその理由までは年次報告から読み取ることはできません。
一方、OECDとEUIPOの報告では、世界の模倣品・海賊版の国際取引額は約4,670億米ドルに上るとされています。また別の分析では、税関で押収された模倣品の多くが郵便や宅配便などによる小口配送で流通している実態も示されており、流通経路の分散・巧妙化が世界的に進んでいることが分かります。
興味深いのは、それぞれの報告書が異なる視点から模倣品の実態を捉えていることです。
特許庁の年次報告は、相談業務の状況を知るための重要な資料です。一方、OECDなどの国際報告は、市場規模や流通実態といったマクロな視点から分析しています。見ている対象が違えば、見えてくる景色も変わります。だからこそ、日本の年次報告だけを見ると相談件数は減少したという事実が見え、世界の報告書に目を向けると模倣品市場は依然として巨大で、流通も巧妙化しているという実態が見えてきます。
数字は結果を示してくれますが、市場の変化までは教えてくれるわけではありません。
ではその数字の向こう側には、どんな市場が見えているでしょうか。
参考:
・模倣品・海賊版対策の相談業務に関する年次報告(2026年版)/特許庁 https://www.jpo.go.jp/resources/report/mohohin/document/nenji/nenjihoukokugaiou2026.pdf
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